DUCATI - Pantah

350 PANTAH XL (1982,1983)/500 PANTAH SL (1982,1983)/600 PANTAH SL (1982,1983)/600 PANTAH TL (1983)/Racing PANTAH (1982)

　750/900のベベル系に替わって80年代へ向けドゥカティの用意したのがコクドベルト駆動SOHCデスモドロミックのLツインでパンタ系と呼ばれるマシン群。750/900系のSOHC駆動がベベルギアであったのに対してコグドベルトによる駆動になった点が主な相違点となる。ベベル駆動に対して慣性質量の発生が抑えられ、またメカニカルロスも減少させることができるが、ベルトの材質の向上がこれを可能にした。デスモはファビオ・タリオーニによるバルブの強制開閉システムで、通常はカムもしくはロッカーアームとスプリングによって行う吸排気バルブの制御を、開き側、閉じ側とも、それぞれ専用のロッカーアームにより強制的に行うもの。サージングを防ぎ高速回転に追随したバルブの正確な制御を目的とする。タリオーニ技師がこれを開発したのは50年代とされるが、その時点でも14000rpmという高回転を可能にしていたといわれる。

350 PANTAH XL (1982,1983)

コクドベルト駆動SOHCデスモドロミックのLツイン。2気筒前方排気。パンタ系あるいは90度Lツインの最小排気量車。TTF2レーサーのベースとなった600SLのスケールダウンモデル。ビキニカウル仕様だがボディは500SLと共通でカウル、ハンドルを換装することも可能。ハンドルはクリップオンからパイプハンドルに変わっている。500/600SLでは油圧だったクラッチ操作はワイヤー式に変更。スイングアームピボットを後端に備えるクランクケース右側に油面確認窓、左側にタイミング調整用の窓を備える。チェーンの取り出しは左。マフラーは2本出し。ハンドルの変更にともないステップもやや前方に移動している。フラッシャーはステーが付くタイプで、ステーは転倒時のダメージを軽減するフレキシブルタイプ。始動はセルのみ。Fフォークはパイオリ製。Rサスはリザボア式でない2本サスで調圧バルブが付く。ブレーキはTL系のトリプルディスクにブレンボ製キャリパ。Fキャリパはフォーク前側に付く。ホイールは6本スポークのFPS製。OEMタイヤはピレリ　マンドレーク。有鉛ガス仕様。500/600SLに比べクラッチの重さはあるが大きくなった2次減速比や増大したハンドル切れ角、（この時期のドゥカティとしては）ソフトなサスペンション、そしてなにより重量の軽さから扱いやすさは格段に向上してこのクラスの役割を果たしたとされる。

500 PANTAH SL (1982,1983)

コクドベルト駆動SOHCデスモドロミックのLツイン。2気筒前方排気。500SLはパンタ系のベースマシン。600とはカウルデザインが異なりタンク容量が600の方が3L程多い。左チェーン。

600 PANTAH SL (1982,1983)

コクドベルト駆動SOHCデスモドロミックのLツインがパンタ系。2気筒前方排気。500SLのボアアップヴァージョン。TTF2レーサーのベースとなった車両で、タイトルを勝ち取ったレーシングパンタは極々少量レプリカ生産された。500とはカウルデザインが異なりタンク容量が600の方が3L程多い。左チェーン。

600 PANTAH TL (1983)

コクドベルト駆動SOHCデスモドロミックのLツイン。2気筒前方排気。ビキニカウル装備でドイツ本国では白バイに使われていた。公称最高速195km/h。グラブバー標準装備。左チェーン。

Racing PANTAH (1982)

 コクドベルト駆動SOHCデスモドロミックのLツイン。2気筒前方排気。600SLをベースにしたTTF2レーサータイトル獲得を記念したレプリカ。生産台数は極僅かで、数台がドゥカティの実質的なワークスチームNCRへ、他各国1台へ渡ったが、市場として重視されていた日本へは2台が上陸した。ワークスの乾式に対して湿式クラッチや、600SLノーマルのキャブレタなどエンジン周りはノーマルの色が濃いが、車体はワークスレプリカの名に恥じない構成となっている。スイングアームピボットがクランクケース後端に設けられたスリムなフレームは専用設計されたもの。Fフォークはマルゾッキでマグネシウムのボトムケース前側に減衰調整のダイヤルが付く。Rサスは右側にオフセットされたド・カルボンタイプでヤマハモノクロス様に後輪を支える。Rサスのリザーバータンクは開放されているシートレール後端に固定。ホイールは前後5本スポークのカンパニョロ。ブレーキはトリプルディスク（未確認だがブレンボと思われる）でRキャリパーはフローティングされる。エンジンはコグドベルトのカバーが外されブラックアウトされたマフラーは左へ1本出し。チェーンの取り出しは左。14000rpmまで刻むヴェリア製メーターの下にオイルクーラーを抱える。灯火類は装備せずサイドスタンドもない。