Scott (Britain 1909-1969 )

 いずれ環境対策の厳しくなる前の話ということになってしまうかもしれないが、ライトウエイトスポーツのもっともポピュラーなかたちというのは水冷2stツインだ。この形式のエンジンを最初に製作したのはヨークシャー生まれのAlfred Angus Scottという男だった。当初このエンジンは世間には奇怪なものと受け取られたようだ。

 Scottは1902年に自転車に取り付けるエンジンとして130cc2stエンジンを製作するところから始め、1908年までには先の2st水冷ツインのプロトを作り上げていた。この試作エンジンと翌年から生産に入った初期のモデルにおける冷却方式は空冷シリンダと水冷ヘッドの組み合わせだったが、これは直にともに水で冷却する方式に変更される。この冷却方法自体が当時は珍しいものだったが、このモデルのオリジナルはそれだけではなかった。ふたつのシリンダの間にフライホイールを置き、2本あるクランクシャフトがそれぞれオーバーヘッドコネクティングロッドを持つという目新しい機構を備えていた。2速のギアボックスとはチェーンで連結され、Rホイールへつながる2次減速もチェーン。このエンジンをトライアングルフレームが包み、Fフォークには中央にスプリングを置く新型のガーダー式を採用されていたが、このガーダーフォークはテレスコピックへと直接つながった技術だったといわれる。これがいかに突き抜けた先進技術だったかは1912から1914年まで3年連続してセニアTTでファステストラップを記録していることからもうかがい知れよう。

 Scottの車は公道仕様車とレーサーとでシリンダの色を塗り分けていたので簡単に判別できる。ロードスターは赤、レーサーはグリーンだ。