-RealSport!- HOREX644OSCA Normal(1991.7) review

C.K.デザイン代表 佐々木 和夫氏インタビュー -2-

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Q.Fブレーキはシングルディスクですが両サイドの倒立フォークのボトムにキャリパーステーが付いています。またレンダリングスケッチではFディスクは左側のようですが。

A.ステーが両サイドにあるのはレース使用などでWディスク化が必要になったときのためです。ディスクを右に移したのには駐車時に車体が左に傾いていることによって起きる雨水による影響を抑える狙いがあります。

 左側アクスル部にスピードメータギアが入る。通例の方式だがここから計測するメリットはレーサー仕様にする場合取り外しが容易なこと。整備が前提のレーシングマシンでは回転抵抗を極力減らすためベアリングのシールまで取り去ることも特に軽量クラスでは普通に行われている。Fサスのボトムケースにキャリパマウントは一体成型。その下に減衰調整アジャスタが見える。大きなエキセントリックカムをくわえるアクスル部は後方から2本のボルトで締結。フォークのインナーチューブ径は41mm。レンシュポルト以上のグレードではこのアクスル部はチタンになる。

Q.コルサのオイルクーラーの搭載位置は珍しい位置かと思いますが。

A.シリンダヘッド脇の位置は今VTRのラジエーターなどに近い例がありますが、ホンダで最初の水冷エンジンを研究していたときにこの位置もありかなと思っていた配置です。OSCAではサイドカウルのエアの流れから有効でした。

 この機体はCORSAではないのでその水平オイルクーラーはお見せできない。左はご覧のとおりニッシン製Fブレーキシステムだがキャリパがモノブロックであることに注目。異径4ポットでローターは鋳鉄製320mm径をフローティングする。このシステムもOSCA専用設計。

Q.スーパーキャブとしてフラットバルブキャブレターが特に注目された時期がありましたがOSCAへの採用はいかがでしょう。

A.OSCAのシングルエンジンではCVタイプのキャブの方が特性としてあっていると思います。

 キャブレタはドミネーター装着のケイヒンVE40をそのまま流用する。左の写真の偏芯カム式スロットルプーリーもドミネーターのものでスロットル全閉から半開までで作用してエンジンのツキを改善する。
Q.コルサのマフラー部分はレーサー仕様に消音板を追加したものということですが。

A.レーサー仕様に消音部を追加したかたちになっています。はずせばそのままレーサーになるというわけです。

 排気系は2in1のオールステンレス。後端が美しく絞り込まれたマフラー部の形状は70年代のマシンの造形を思わせる。当時のこのテール部のテーパー処理には背圧と充填効率を意識した部分があった。マフラー外側自体は深絞りで作られておりリベットなど表に出ない工芸品的な仕上がり。ドリブン/ドライブスプロケットはともにアルミ。チェーンカバーはない。

Q.塗装に関してはグレードによって選択幅がちょっとあるようですが。

A.コルサではタンク上面を黒に塗り分けるなどしていますが塗色に要望があればできるだけお応えするようにはしています。個人的にはグリーンに塗ってみようかなどと考えています。

 ジュラルミン削り出しのチェンジペダルまわり。偏芯カムのスイングアームピボット、スイングアームの補強部の様子、エキパイの集合部が見える。スイングアームのピボット近辺にはチェーンスライダがボルトオンされる。上級グレードではスイングアームはアルマイト仕上げのアルミになる。
 
 ブレーキペダルのリンク部のピロボールジョイント。アームはもちろん削り出しで大きな肉抜き加工が見える。いかにも工程数の多そうなピボット部。
 

 

 
 ブレーキペダル部分。ペダル内側に伸びる突起は、ブレーキペダルとステップホルダーの間に足が落ち込むトラブルを防止する配慮。チェンジペダル側はペダルとステップが同軸のためない。奥に見えるアルミのロッドはRブレーキキャリパを支えるトルクロッドで、これも旋盤切削で径を調整されていることがわかる。
 

 

 
 テールカウルに記された佐々木氏のサイン。実際にOSCAの図面に記されたものから版が起こされている。この車の設計の問題でなにかあったら責任をとる、そう熱く語っていただいた想いが込められている。
Q.OSCAの名の意味についてお聞かせ願えますか。

A.最初にお話したこの車の背負っているものについて一考いただきたいんですが、HOREXに携わってきた人たちの思い、共感して最高のバイクをつくることに尽力してくださった方たち、そしてオーナーとなってくださった方たちへの設計者の責任として、そこにしたためたそれは私のサインです。オスカはカズオの逆さ読みで、設計図面に私が残してきたものをそのままデザインとして記しました。本田宗一郎氏のもとで、ものを作るということ、その責任を芯から叩き込まれてきた思いというか、証でしょうか。

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