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YZF-R6 (1999)/YZF-R6 (2000)/YZF-R6 (2001)/YZF-R6 (2003)/YZF-R6 (2005)/YZF-R6 (2006)

YZF-R1 (1998)/YZF-R1 (1999)/YZF-R1 (2000)/YZF-R1 (2002)/YZF-R1 (2004)/YZF-R1 (2005)/YZF-R1 (2006)/YZF-R1 SP (2006)/YZF-R1 (2007)


YZF-R6 (1999)

 水冷4stDOHC4バルブ インライン4 600cc。初代R6。欧州市場向けモデル。1998/9/15のインターモト98(ミュンヘン)にて1999年欧州市場向けニューモデルとして発表。資料発表は1998/8/26。ヨーロッパの600ccクラスプロダクションレースの人気をにらんで開発されたスーパースポーツ。1998年発表のYZF-R1に続いてYZF-R6と命名された。YZF-R1の技術を継承しながら、600ccマシンならではの<高回転エンジンを扱う愉しさ><深いバンキングアングルでのコーナリングの愉しさ><マシンを制御しきる愉しさ>を追及し、具現化した次世代モデルとされる。

 R1同様アルミデルタボックスIIフレームに水冷4発エンジンを搭載するがフレームは専用設計で、骨格部材に自由曲面と板厚徐変の設計技術を導入し軽量化を推進する。ヘッドパイプにはR1同様の新設計ベアリングおよびシールを採用し、フリクションロスを低減する。ハンドルはアルミ接着構造として慣性モーメント低減を図っている。リヤフレームは別体式。R1の思想を踏襲するロングスイングアームは上側にスタビライザーを持つ。乾燥重量169kg(YZF600R:187kg)、軸間距離1380mm(YZF600R:1415mm)、リーンアングル56度。

 前輪懸架はインナー43mm径正立テレスコピック。後輪懸架はリンク式モノクロスでショックユニットはビルシュタイン型ダンパーを装備するピギーバックタイプ。前後ともプリロード、伸圧減衰力調整機構付き。F120/60ZR17、R180/55ZR17のタイヤを履くホイールは3本スポーク。フルカウルにピリオン別体式のシートのレプリカスタイルのデザインもR1イメージを踏襲しているがもちろん別物。

 エンジンは上下分割の上側クランケースとシリンダを一体とする仕様で、この手法は四輪では一般的だが二輪ではそうではなかった。高い放熱性を狙う高速メッキ技術を投入したこのケース一体式シリンダに組み合わせるのは軽量鍛造ピストン+低フリクションピストンリング+高強度浸炭コンロッド。ボアxストロークは65.5x44.5mmでYZF600Rに比較し5mmショートストロークとされた。圧縮比は12.4:1。エンジンスペックは120ps/13000rpm(DIN)、6.95kg*m/11500rpmはリッター当たり200ps。2極プラグのシリンダヘッドでバルブスプリングには高強度のVX材を使用する。また燃焼効率改善のためにDC CDI&ダイレクトイグニッション、2系統点火時期コントロールを採用している。キャブレタはTPS装着のCVRD37ダウンドラフトタイプ。ナックルカウル位置に配する2つのマルチリフレクターヘッドライト間にインテークを設けるラムエアシステムを採用する。テールランプもマルチリフレクタータイプ。6速ミッションをつなぐクラッチは750ccクラスサイズ。排気系は4-2-1。ラジエータはYZF600R比較で20%放熱に優れるとされる。

 前輪のワンピース型軽量小型4ポットキャリパ、デジタルメータパネル、バックミラーは「YZF-R1同様部品」とされている。

 スペックデータシート(xlsxファイル)


YZF-R6 (2000)

 水冷4stDOHC4バルブ インライン4 600cc。欧州市場向けモデル。2000年WSS(World Super Sport)でチャンピオンを獲得した。


YZF-R6 (2001)

 水冷4stDOHC4バルブ インライン4 600cc。欧州市場向けモデル。2000/9/13のインターモトミュンヘン2000(ミュンヘン)にて欧州市場向け2001年モデルとして発表。資料発表も2000/9/13。販売計画は14000台(欧州、年間)。2001年モデルは、細部の熟成および外観デザインの一部変更のマイナーチェンジ。

 変更点は以下の通り。

 性能:軽量イグナイタ/小型軽量バッテリ/軽量Fフォークの採用。シフトフィーリング向上のためのミッションおよびカムシフトの最適化。オイル消費量の低減およびスロットルレスポンスの向上を目的とするピストン/コンロッドの仕様変更。ハンドリング改善のためのタイヤ変更。

 外観:テールライトへのLEDランプ採用(量販モーターサイクルとして初)。あわせてナンバープレートをフェンダーレスをイメージしたデザインへ変更。リヤカウル下面を全面塗装仕上げとした。そのほかシート下にUロックスペースが新設されている。

 スペックデータシート(xlsxファイル)


YZF-R6 (2003)

 水冷4stDOHC4バルブ インライン4 600cc。R1に1年遅れてフルモデルチェンジ。欧州市場向けモデル。2002/9/18のインターモトミュンヘン2002にて欧州市場向け2003年ニューモデルとして発表。資料発表は2002/9/11。2002年12月発売(欧州販売各社により異なる)。販売計画は18000台(EU圏内、年間)。FI仕様のニューエンジンを搭載するフレームはオールキャストで製造され、オールキャストフレームの二輪量販車投入は初のケースとなる。またRフレームおよびスイングアームはヤマハCFアルミダイキャスト技術によって製造されるが、この技術の量販車投入も世界初。

 2003年型R6の開発コンセプトは従来モデルを継承したもので、<更なるコーナリング性能の向上><よりエキサイティングなエンジン性能の具現化>としている。

 エンジン:鍛造ピストン、ピストンリングをはじめ9割の部品を新設計と謳う。ボアxストローク、圧縮比、燃焼室形状などのスペックは従来を継承するが、吸排気効率の向上、ポンピングロス低減などで全域にわたり性能アップを実現したとする。最大出力値はラム圧のかかった状態で3psアップの117ps/13000rpm(発生回転数は従来モデルと同じ)。従来モデルのメッキシリンダはライナーにメッキ処理を施したものだったが、2003年モデルではダイキャスト製シリンダに直接メッキをかける直メッキシリンダとし、摺動抵抗の低減を図りながらライナーをなくすことにより放熱性、精度、剛性バランスの向上を狙う。

 ポンピングロスの低減は、各気筒間の通路面積を拡大することで実現。ピストン往復にともなうクランクケース内空気容積変化を抑え、レスポンスを改善する。またクランクジャーナルへの負荷を低減するクランクバランスの最適化など、ロス馬力の低減が図られている。このほか、オイルの戻りを改善する新形状クランクケースカバー、アルミ製オイルクーラー、従来サイズに抑えながら冷却効果アップを狙うラウンドタイプラジエータ、希土類マグネトーを使う薄型ACMなどが取り入れられている。ミッション周りも操作性向上のため、シフト剛性、シフト径回転マスの見直しを受けた。

 FI:目玉の一つである新採用のFIは2002年型R1同様にサクションピストン併用タイプで吸気効率とレスポンスの両立を図る。サクションピストン付きFIは、センサからの情報をマイコンで計算した最適なA/F値と最適燃料噴射特性を、負圧差によって作動するフリーピストンにより自然吸気の滑らかさを残しながら実現するもので、コントロール性と高回転域での出力特性向上を両立する。同社資料では特に8000rpmからの二次曲線的な加速、12000rpm以上の伸びを意識したものとされている。またエアクリーナボックスは7.3→7.6Lへ容量をアップ。スロットルボディ口径は37→38mmへ拡大された。

 排気系:マフラーはディフューザーを2分割式→チタン使用の一体式へ変更。グラスウールを挟んだ状態で曲げ加工を施す。サイレンサカバーはアルミ。排気管も全面新設計となっており、従来モデルに比較してサイレンサ/触媒を含み1kg軽量化されている。また新採用の触媒などによりEU2規制に適合した。

 フレーム:オールキャストアルミフレームは2002年型R1と同じくデルタボックスIIIの呼称を持つが、R6に採用されたフレームは金型鋳造による2分割構造が特徴。オールキャストにより、従来モデルに比べ溶接箇所が16→2箇所に大幅に減っている。正確な鋳造技術が前提だが、軽量化を実現しながら、個体差を減少し、精度を上げることが可能になる。このニューフレームは従来モデルに比べ50%の捩れ剛性アップを達成しており、その値はYZF-R7と同レベルとされる。エンジン懸架は前側3点アジャストの直締結。またRフレーム/スイングアームの2つの部位は同社独自の技術「CFアルミダイキャスト技術」で作られる。スイングアームは最薄部の肉厚2.5mm、Rフレームは2mm。この2003年型R6は、メインフレーム/Rフレーム/スイングアームの3点をアルミキャストとした初の市販車である。車体は乾燥重量で168kg→162kgに軽量化されている。

 足回り:軸間距離、キャスターの値は従来モデルと同じ。前輪はフォークオフセット量を40mm→35mmに変更。前輪アクスルの締付方式変更、正立式テレスコピックフォークのインナーチューブ薄肉化の改良を受けている。後輪はドライブ軸/ピボット軸間距離を96mm→86mmへ短縮し、チェーン張力の影響低減を図るほか、スイングアーム長は10mm延長し575.5mmとされた。また新設計の5本スポークホイールを採用。ハブとスポーク部分を一体構造面とする軽量設計でバネ下重量を低減する。Rブレーキはキャリパ/ブレーキディスク/マスターシリンダの変更を受けている。

 デザイン:コンセプトは<ニューエッジフォルム>。新型ヘッドライトはガトリングビームヘッドライトと呼ばれる。またフットレストなど従来モデルではアルミ鋳造だったパーツがアルミ鍛造とされ、外観品質の向上が図られている。

 スペックデータシート(xlsxファイル)


YZF-R6 (2005)

 水冷4stDOHC4バルブ インライン4 600cc。2005年はかなり手の入ったマイナーチェンジ。欧州市場向けモデル。2004/9/15のインターモトミュンヘン2004にて欧州市場向け2005年ニューモデルとして発表。資料発表は同日2004/9/15。2005年2月発売(欧州販売各社により異なる)。販売計画は15000台(EU圏内、年間)。吸気系を中心とするエンジンの見直し、剛性バランスの見直しを受けたフレーム、倒立式Fフォーク、Fブレーキへのラジアルマウントキャリパ採用などがポイントの変更になる。「エキサイティングなベスト600ccスーパースポーツ」の従来モデルの方向性を基本軸としながら、クローズドコースでの大幅なポテンシャルアップを謳う。最高出力は従来モデルに比べ3psアップの120psを同じ13000rpmで発生する(ラムエア加圧なしの値)。車重は乾燥で162kg→163kgへ1kg増加している。

 エンジン:ボアxストローク、圧縮比、燃焼室形状などに変更はない。主に手を入れられたのは吸気系で、スロットルボディ径を従来モデル比38mm→40mmへ拡大し、インジェクター燃圧をアップ。あわせてファンネル口径も39.4mm→41.6mmへ拡大。ファンネル長は1番/4番のみを短縮する。このファンネル改良は、中速域以降の吸排バルブオーバーラップ時にトルク特性改善に貢献するとされる。そのほか、1本ファンだったラジエータファンがツインリング型に変更されラジエータ周辺のスペースの余裕を確保している。この配慮はタイヤのサイズ変更などを考慮したもの。

 車体:軸間距離が1380mm→1385mmと5mm延長され、シート高は820mm→830mmとアライメントがかなり変わっている。デルタボックスIIIフレームは剛性バランスの見直しを受け、Rショック下側のリンク部分の肉厚などが調整された。そのRショックはレバー比、剛性、バネレートの変更を受け、前輪に新採用された倒立式テレスコピックフォークとのマッチングを図っている。Fフォークはプリロード/伸圧減衰調整機構を持つフルアジャスタブルタイプを奢られた。インナーチューブ径は41mm。この変更にあわせ、アルミ鋳造のハンドルクラウン、アルミ鍛造アンダーブラケットが新作されている。そのほかサイドスタンド、アンダーカウルが変更された。

 前輪周りの剛性アップ、アライメント変更に伴い、Fタイヤを70扁平ラジアル120/60-ZR17 M/C→120/70-ZR17 M/Cに変更した。またFブレーキシステムはディスクサイズを298mm径/5mm厚→310mm径/4.5mm厚とした。ディスクローターは2004年型R1と同デザインだがR6専用設計で、前輪のジャイロモーメント最適化に貢献するとされる。キャリパはラジアルマウント式の新作で、あわせてアクスルブラケットも新設計されている。2004年のモデルチェンジでラジアルマウントキャリパを採用したR1同様に、マスターシリンダもラジアルポンプ式を新採用し、ブレーキレバーも新デザインとなった。

 カラーバリエーションは「ビビットレッドカクテル1」「ダークパープリッシュブルーメタリックC」「ブラックメタリックX」の3色。

 スペックデータシート(xlsxファイル)

 このモデルは2004/11/16-12/10の期間限定の受注生産で「YZF-R6レースベース車」として日本国内販売された。2004/11/15発表。発売日は2005/1/11。ST600参戦をターゲットにしたもので、購入者特典として、2005年シーズン限定で、エンジン及び車体のセッティング参考データの提供、イベントレース会場でのロードレーススタッフによるサポートが付いた。この車両は保安部品を外した状態での販売とされるが、もちろん国土交通省認可を受けておらず、公道走行不可、保証対象外での販売だった。価格は\675,000-(YEC製レース用キットパーツのECU及びワイヤハーネス付属、消費税含まず)。カラーはブラックメタリックXのみ。


YZF-R6 (2006) STD/1人乗り仕様

 水冷4stDOHC4バルブ インライン4 600cc。フルモデルチェンジ。欧州・北米市場向けモデル。2005/9/29の広報にて概要発表。2005/10/1開催のパリ・ショーにて欧州市場向け2006年ニューモデルとして発表。2005年10月以降発売(欧州販売各社により異なる)。販売計画は16000台(EU圏内)。このパリ・ショーで同社は最先端の電子制御技術を積極的に二輪製品に織り込む姿勢を示し、その技術思想を「ジェニック(G.E.N.I.C.H.)」と名付けて発表した。2006年R6は、量販二輪車として世界初の装備として電子制御スロットル(YCC-T)を採用する新エンジンを搭載するなど、その先駆けとなったモデル。そのエンジンはチタン製吸排気バルブ、ツインインジェクター、スリッパークラッチ、EXUP+ミッドシップマフラーなどを新装備し従来モデル比7psアップの最高出力を、120ps/13000rpm→127ps/14500rpm(ラム過給なし)と更に1500rpmも回して発生する。2006年モデルのYZF-R1SP仕様が用意されるなど、量販車ベースのレースに向ける同年のヤマハの勢いは如実で、この2006年型R6でも「サーキット最速のエクストリームスーパースポーツ」をコンセプトに掲げている。なんと「1人乗り仕様」が用意される点など、レースベース車としてのヤマハの本気度がうかがい知れるところ。車重は乾燥で1人乗り仕様が161kg、2人乗り仕様が162kg(2005年モデルは163kg)。

 エンジン:ボアxストロークを従来モデルスペック65.5mmx44.5mm→67.0mmx42.5mmとし1.5mmのショートストローク化で回転数を稼ぐ。ボアが拡大されているが、ボアピッチを従来モデルと同一に抑え、エンジン幅の拡大を防いでいる。ヘッド部分はコンパクト化され、新たにチタン製を奢られた吸排気バルブを立てて径を拡大(吸気バルブ挟み角/径:14度/25mm→11.5度/27mm、排気バルブ挟み角/径:14度/22mm→12.25度/23mm)、圧縮比は12.4→12.8へアップ。バルブのリテーナーはアルミ製とされた。FIにはMOTOGPからのフィードバック技術セカンダリーインジェクターを採用し、ツインインジェクタとした。回転全域で働くメインインジェクタに加え、中高速域でセカンダリーインジェクタが燃料供給を開始する。またクランクシャフトを3mmアップするなど、3軸(クランク/メイン/ドライブシャフト)の位置が変更されており、新フレームのデザインに自由度を与えている。またYZF-R1 SPで採用されたスリッパークラッチを採用し、シフトダウン時のマシンの安定度を増しコントロール性の向上を図る。そのほか新採用の装備として、両側吸込型オイルポンプ/ウォーターポンプ、ワンウェイ一体式ACマグネトー、カムチェーンへのセミ油圧テンショナーの採用などがあり、ヘッドカバー/ケースカバーはマグネシウム製になった。

 YCC-T:この車の最大のトピックは電子制御スロットルの採用。アクセル操作をECUが解析し、駆動トルクカーブと吸気流速を最適化するようスロットルバルブをモーター駆動することで、高回転型エンジンに関わらずスムースなコントロール性を実現する。ライダーの微妙な感覚に反応する素早いレスポンスを実現するために処理速度を要求されるECUは、容量を従来モデル比5倍とし、3個のCPUを搭載する。

 排気系:マフラーはセンターアップではなく、前後長を詰めて下に置きマスの集中化を図ったミッドシップタイプが採用された。ラムダセンサ付き三元触媒を装備する。またこのモデルからEXUPを搭載するが、実は600ccスポーツモデルでは初めての採用。チタンボディのEXUPを集合部に設置し、EXUPバルブを1枚とすることで小型化している。

 フレーム:従来モデルのR6はフルキャストフレームが売りのひとつだったが、この2006年モデルの新設計アルミ製デルタボックスフレームは「鋳造+プレス」のYZF-R1同様の手法を採る。ヘッドパイプ部分をエアインダクション流路が貫通し、直線的に処理されるレイアウトはMOTOGPワークスレーサーYZR-M1(2005年型)を意識したもの。ヘッド付近フレーム内側をエアクリーナスペースとして活用する。全体としては、前後長を詰めたエンジンが干渉を回避し、ヘッドパイプ/ピボット/Rアクスルを結ぶラインにあるマシンのロール軸に沿った形でフレーム/スイングアームが車体を形作る構成になっている。そのスイングアームもフレームと同様にフルキャストから「鋳造+プレス」のハイブリッドのトラス+ボックス構造に変更された。従来モデルに比べ1kg軽量となったスイングアームは前述の思想からピボットを20mm上に移動し、アンチスクワットを抑え、駆動力がかかったときの後輪の姿勢変化を抑え、効率を向上させている。リアフレームは従来同様にCFアルミダイキャストにより製造される。こうした車体骨格の変更とテールのスリム化により前輪分布荷重は52.5%(従来モデル比1%増)となった。

 足回り:前輪懸架はプリロード/伸び側減衰調整機能付きの倒立式テレスコピックフォークでインナー径は従来モデルと変わらず41mm。新たに圧側の減衰力を低速用/高速用で独立したセッティングとして同時に可能にする2WAY圧側減衰調整機能が追加された。Fブレーキはアルミ製ローターブラケットを採用し、ブレーキパッドが変更されている。Rショックはマスの集中を狙ったボトムリンク式の新型となり、前輪側同様に2WAY圧側減衰調整機能を装備する。

 デザイン:一新された外装で、アンダーカウルには新たにインナーダクトが装備された。またアルミ製リヤマッドガードステー、アルミ鍛造サイドスタンド、ラップタイムモニター、アルミ製チェーンプーラーなどを新採用する。このチェーンプーラーはタイヤ(ホイール)交換を容易にするTZタイプで、やはりレース使用を意識した装備。カラーバリエーションは「ディープパープリッシュブルーメタリックC」、「ブルーイッシュカクテルホワイト1」、「ブラックメタリックX」の3色。

 スペックデータシート(xlsxファイル)

 このモデルは2006年にレース用モデルとして50台限定で日本国内販売された(2005/10/12発表、受注期間2005/10/17〜12/20、2006/1/20発売)。購入者特典として、国内主要サーキットでのヤマハスクールの参加費無料での受講権(1回のみ)が付いた「YZF-R6レースベース車」の呼称のこの車両は、国土交通省認可を受けておらず、公道走行不可、保証対象外での販売だった。価格は\800,000-(FIマッチングシステム、ハーネス付属、消費税含まず)。カラーはブラックメタリックXのみ。

 

 モデル名:2006年YZF-R6V/VC/SPV/SPVCのすべてを対象としてリコール情報アリ

 USヤマハのリコール情報より転記:

  Factory Modification Campaign - Air Filter Element. Yamaha Technical Bulletin M2006-018R 「In affected motorcycles, the air filter mounting screws may loosen and fall out. If they do, they could be caught in the throttle valve, which could prevent the operator from reducing engine speed properly. This could result in loss of control and a vehicle crash with injury or death. 対象の機体について、エアフィルターのマウントねじが緩む可能性がある。そうして外れたねじをスロットルバルブが噛みこんでエンジン回転が下がらなくなり、死傷事故に至る可能性がある。」→措置「To correct this defect, Yamaha is initiating a Factory Modification Campaign. Affected motorcycles must have the air filter element replaced with a new one that is designed to hold the screws securely. ねじの固定をより確実にするよう設計変更されたエアフィルターエレメントに交換する。」措置済の識別:特に記載なし。この重大な欠陥について対処済かどうか不明な場合にはヤマハディーラーに確認するように、とされている。「Do not operate affected motorcycles until they are modified. If you are not the first owner of the motorcycle, and are unsure if this modification has been done, contact any authorized Yamaha Motorcycle Dealer to check. Any authorized Yamaha Motorcycle Dealer can perform this service.」

http://www.yamaha-motor.com/sport/fmc/factory_modification_letter_M2006-018R.pdf



YZF-R1 (1998)

 水冷4stDOHC5バルブ インライン4。初代R1。欧州市場向けモデル。1997年秋発表。リッタークラスのスーパースポーツR1の初期型。スポーツバイクといえどもビッグバイクにはゆとりが必要と訴えていたヤマハが初めてつくったリッターレプリカ。デルタボックスIIと名打った新設計のアルミフレームに150ps/10000rpm、11.0kg*m/8500rpmのパワーユニットを搭載。乾燥重量177kgの軽量ボディ。エンジンの軸配置を工夫して前後長を詰め、その分スイングアームを長くとって運動性を確保したのがもっとも大きな特徴。タンク形状もコーナリングフォームを優先したデザインで、ピリオンシートはシートカウルの上。レプリカフォルムのフルカウルのナックルカウルに沿ってフラッシュサーフェイス化された異型2レンズのヘッドライトがR1の顔となる。F120/70ZR17、R190/50ZR17のタイヤを装着するホイールは3本スポークのキャスト。ブレーキはトリプルディスク。前輪懸架は倒立式テレスコピックフォークで、後輪は上側にスタビライザーの付くアルミスイングアームによるリンク式モノクロス。塗装仕上げのRフェンダーをこのスタビライザーにマウントする。排気系はEXUPを装備し、サイレンサを右1本出しとする。


YZF-R1 (1999)

 水冷4stDOHC5バルブ インライン4。欧州市場向けモデル。1999年モデルはカラー変更中心のマイナーチェンジ。基本スペックに変更はない。シフトペダルのアーム形状を見直し、シフトチェンジのフィーリングの向上が図られている。またタンク自体に変更はないがリザーブ位置が見直されリザーブ容量が5.5Lから4Lに変更されている。


YZF-R1 (2000)

 水冷4stDOHC5バルブ インライン4。2代目のR1。欧州市場向けモデル。細部の熟成を主眼とした改良。


YZF-R1 (2002)

 水冷4stDOHC5バルブ 前傾インライン4 998cc。3代目R1。1998年の登場以来最初のフルモデルチェンジ。欧州市場向けモデル。2001/9/18発表、同日開催のミラノショーで2002年欧州市場向けニューモデルとして展示発表。エンジンはFIの採用など大幅な吸排気系の変更を受け、デルタボックスIIフレームは捩れ剛性を30%アップしたデルタボックスIIIとなった。販売計画は14000台(欧州/年間)(2001年までのR1は欧州で42000台の登録台数を記録した)。

 開発コンセプトは<ダイナミック・コーナリング・パフォーマー>。

 エンジン:シリンダの前傾角は30度。鍛造ピストン、メッキシリンダエンジンは新たにFIを採用。このインジェクションはサクションピストン付きで量販二輪車初の装備となる。サクションピストン付きFIは、センサからの情報をマイコンで計算した最適なA/F値と最適燃料噴射特性を、負圧差によって作動するフリーピストンにより自然吸気の滑らかさを残しながら実現するもので、コントロール性と高回転域での出力特性向上を両立する。またFI化にともないキャブレタ仕様に比べ吸気ポートは30mmショート化された。このほかハイ・シリコン材シリンダスリーブ、塑性大端締め付けボルト採用コンロッド、新型ピストンリングなどを採用し、エンジンの信頼性向上を図っている。またエンジン塗装はシルバー/ブラック→ローグロスブロックへ変更された。オイルクーラはフィン形状を見直し、冷却能力を20%向上。ラジエータは新設計され小型化された。さらにイリジウムプラグ/軽量希土類ACMの新採用、ピックアップコイルのクランク検出間隔を4分割から8分割に細分化、エンジンコントロールユニット/イグナイタユニットの容量アップ、シフトフィーリングの向上などが行われている。環境面ではエア・インダクションシステム、ハニカム式三元触媒を採用し、EU2規制値をクリアした。

 エアクリーナボックス:吸気ダクトを前側に持つ新形状となった。エアフィルターも丸型→板型へと変わっている。

 排気系:エキパイにはチタン材を採用し1kg軽量化するほか、4into1→4-2-1への接続方式も変更された。EXUPは駆動軸を4気筒1軸→1-4気筒/2-3気筒の2軸となり、軽量化と精度アップを図る。またEXUPバルブの形状もギロチン型からバタフライ型へ変更されバルブ作動の排気への干渉を低減している。さらに駆動モータを車体に対して右下へ移設し、その駆動ワイヤのストレート化を図っている。

 フレーム:エンジンの懸架位置が20mm上へ変更され、メインメンバーに溶接されていたRフレームは別体式になった。フレーム自身はアウターパネルの厚みが3mm→3.5mmとされたほか、ハンドルの逃げ部分が廃止されるなど大きな見直しを受けている。

 前輪懸架:倒立Fフォークはインナーを41mm→43mmへ大径化すると同時にインナー/アウターチューブを薄肉化。またバネレートを見直しストローク量を135mm→120mmへ短縮。オフセット量を35mm→25mmとしてハンドルの慣性モーメント低減を図る。また接着式だったハンドルは一体肉抜き加工のアルミ鍛造品となった。

 後輪懸架:アルミ製スイングアームは左右非対称デザインとなった。同社の資料では、「これにより各パーツの最適配置を犠牲にせずにロングリヤアームの特性をさらに引き出した」、と説明している。このスイングアームは車体側のアライメント変更にあわせて対地角を9.7度→11.8度と変更されている。Rショックユニットは、バネレートの変更、減衰力の調整幅の拡大などの見直しを受けた。

 制動:FブレーキはMOSワンピースキャリパにアルミピストンを新採用し、パッドの材質、ブレーキホース配置などが見直された。Rブレーキはキャリパが新型となり、ディスク径が245mm→220mmへと小径化された。

 デザイン:<メカニズムの融合><ダイナミックムーブメント><魅せるデザイン>をキーワードに作り上げられた新デザイン。先に発表されたYZF-R6(2001)同様に、LEDテールライト、テールカウル下側の塗装仕上げを新しく取り入れている。フラッシャーはリフレクタ内蔵式となった。

 このほか新設計ホイール、プレートを小型化し200g軽量化されたドライブチェーン、シフトのタイミングを点灯して知らせるシフトインジケータなどが新しく装備された。カラーリングは「シルバー3」「ビビッドレッドカクテル1」「ディープパープリッシュブルーメタリック」「ディープパープリッシュブルーメタリックC/ブルーイッシュホワイトカクテル1」の4色。

 スペックデータシート(xlsxファイル)


YZF-R1 (2004)

 水冷4stDOHC5バルブ 前傾インライン4 998cc。4代目R1。フルモデルチェンジ。欧州市場向けモデル。2003/9/9発表、2003/9/16開催のミラノショーで2004年欧州市場向けニューモデルとして展示発表。発売は2004/2(販売会社により異なる)。販売計画は15000台(EU圏内、年間、シリーズ合計)。早いモデルチェンジの背景には、WSBのレギュレーションが2003年に変わり、4気筒1000ccの参戦が可能になったことにより、このクラスがより脚光を浴びた事情もあった。最高出力は従来モデル152ps/10500rpm→172ps/12500rpm(ラムエアの加圧なしの値)。車重は乾燥で174→172kgと2kg軽量化された。

 開発コンセプトは<セカンダリーロード最速のビューティフル&エキサイティングスーパースポーツ>。

 エンジン:40度前傾するシリンダを持つインライン4DOHC5バルブ+FIエンジンは新設計。冷却するラジエータは湾曲タイプとされた。またエンジン単体で4kgの軽量化を実現している。

 ニューエンジンは、ショートストローク化、バルブの大径化による高回転化で出力を稼ぎ、電子制御サブスロットルバルブとEXUPで中低速を補い、またエンジン内の回転部品の慣性モーメントを小さくしてレスポンスを改善する構成となっている。高回転・高出力化のためボアを3mm広げ、ボアxストロークは従来モデルと比べ74.0mmx58.0mm→77.0mmx536mmとされた(2002年のモデルチェンジではボアxストローク値)。ピストンは従来モデルと同じ鍛造アルミだが、最適化を進めボア拡大にも関わらずほぼ同重量に仕上げられた。ピストンピン径も変わらず17mm。2002年には燃焼室形状などの変更はなかったが、この年はカム軸間距離の短縮、バルブ挟み角の狭角化、バルブ径/スロート径(吸排)の0.5mm拡大、バルブリフト量の拡大など大きな設計変更を受けている。これらにより小さな燃焼室を実現した結果、圧縮比は従来モデル11.8→12.4となった。なおプラグは従来モデルと同じ10mm径。ヘッドの角部位の数値を当社技術資料より以下に抜粋する。

  バルブ傘径(mm) バルブステム径(mm) スロート径(mm) バルブ挟み角
IN EX IN EX IN EX IN-C IN-LR EX
2004年モデル 23.5 25.0 4.0 4.5 20.0 21.5 8deg45min 15deg45min 11deg
2003年モデル 23.0 24.5 4.0 4.5 19.5 21.0 9deg30min 16deg45min 11deg30min

 コンロッドは従来モデル同様にクロモリ鋼浸炭焼入れ。高出力化に応じて信頼性を確保する技術として、コンロッド大端部にFSコンロッドを同社二輪車として初採用。これは真円加工した大端部に楔を打ち込んで破断させた後、その破断面をボルト締結する技術。四輪ではすでに実用化されているが、それでもクロモリ鋼浸炭焼入れ材で破断面に母材組織が残ったまま破断したものは世界初とされる。FSコンロッドのメリットは真円度が増す点にあり、コンロッドの動きの精度を上げ耐久性・安全性を向上することにある。また合わせ面の加工や位置決めピンなどが不要になる分、コストダウンのメリットもある。大端部の締結はナットレスタイプで大端ピン、クランクジャーナル径は2mm縮小された。最高出力の発生回転数が2000rpmも上がっているが、最適化を進めた結果コンロッドの重量増は11%にとどめられた。

 ライナーレスの直メッキシリンダ(セラミックコンポジット(Ni-P-SiC)メッキ)のデザインは、従来モデルのアッパーケース一体構造を廃して別体式とされた。これはヘッド部に冷却水流路の開放部を持たず、高剛性を得やすいクローズドデッキシリンダ方式を採用したためで、低圧鋳造でシリンダブロックの金属組織の最適化を図ることで、そのメリットをより活かし高信頼性を獲得している。また9mmだったシリンダ間隔をヘッドガスケットが機能する限界とされる5mmまで詰めることで、ボアを拡大しながらもシリンダ幅を従来モデルに比べ4mm増に抑えている。3軸を千鳥配置としたエンジンはさらに前後長を詰めコンパクト化が推し進められているが、バンク角を確保しながら重心位置を下げる工夫として、従来モデルではクランクシャフト軸上左端にレイアウトされたACMを廃し、エンジン背後にACM軸を新設している。ACM軸はクランクシャフトウェブに設けたギヤで駆動され、ACMはコンロッドを避けるためにローター外径を80mmに小型化。小型化による発電量の低下を補う工夫として、軸方向へのステータコイル延長、ACM軸の回転速度アップが挙げられている。このACM移設によりクランクシャフト軸上でエンジン幅は57mm短縮を果たした。それ以外のエンジン寸法では、2003年モデルに対してエンジン前後長は19mm、エンジン全高で40mm小型化された。これらはヘッドのコンパクト化(カムシャフトピッチ2.8mm、全高3mm、吸排カムジャーナル径2mm小型化)、各軸間距離の短縮(クランクシャフト/メインシャフト間4mm、メインシャフト/ドライブシャフト間2mm短縮)、クランクシャフトウェブの小径化(クランクマスは従来モデル比20%カットとされている)、大端ピンの小径化などによるもの。また、エンジン回りの軽量化の努力の様子が以下の数値に見て取れる(ヤマハの技術紹介Webより抜粋)。

主要軽量化部品 2003年モデル重量(g) 2004年モデル重量(g)
カムシャフト 1648 1511
クランクシャフト 8620 7220
ACMローター+ステーター 2390 1904
スロットルボディ 3360 2704
排気系 9136 8652
始動系(ワンウェイ、ギヤ) 667 180
クラッチアッセンブリ 4613 4301
トランスミッション 7154 6517

 軽量化の手法としては材質の置換があるが、2004年モデルではサーモハウジングアセンブリ/ダンパーチェーンが樹脂製に置換されているほか、クラッチカバー/ブリーザーカバーをマグネシウムに、動弁系のリテーナをアルミに、排気系では触媒コンバーターを除くほぼすべての部品(EXUP含む)をチタンに置換している。

 始動装置も大きく変わっている。従来モデルではエンジン幅を抑える狙いからメインシャフトに配置されていた始動用ワンウェイとギヤだが、2004年モデルでは先述のように新設されたACMシャフトに移設された。ACMの発電量を稼ぐためにクランクシャフトに対して増速されているACMシャフトに移されたため、これらの始動用部品は小型化されている。

 伝達系:クラッチはフリクションプレートの枚数を増やして容量を確保しながら小径化されている。6速ミッションはよりクロスした構成へ変更されており、L/Tは2.24→2.00となった。

 吸気系:FIには従来モデルのサクションピストンに替え、電子制御のサブスロットルが設けられた。サクションピストンに比べ、より吸気量の制御の自由度が高まるとされている。このサブスロットルはメインスロットル上流に設置され、エンジン回転数とメインスロットル開度の情報によりモーター駆動で電子制御される。インジェクターは4孔2方向噴射・高ダイナミックレンジのプレート型ロングノズルタイプ。スロットルボディの口径は従来モデル40mm→45mmに拡大されているが、車体幅を抑えるために1ボディ2バレルタイプとし、サブスロットル駆動モーターおよびスロットルプーリーの配置を軸上からずらすてリンクを介した駆動にするなどの工夫が施され、スロットルボディの全幅は従来モデルより27mm縮小されている。

 最高出力の公称値にはラムエア効果が含まれていない。ヘッドライト下2つの吸気口を持つエアインダクションを採用しており、走行風圧をタンク前に設置するエアクリーナボックスへ導くこのシステムは、冷気導入と加圧により、出力特性の向上と加速時のレスポンス向上を狙うもの。

 排気系:大がかりなレイアウト変更を受け、サイレンサをテールカウル下に置くデザインとなったが、これはこの時期のスーパースポーツに流行した方式。管長を稼ぎ、マスを車体中心に置くメリットがあるとされたが、重量物であるサイレンサを高い位置に置くデメリットもあった。2004年型R1でもタイヤを避けながら容量を稼ぐためにサイレンサを楕円断面形状の2本出しとし、重量面での不利を認めつつもデザイン上のポイントと位置付けている。重量の問題については、テールエンドキャップをチタンの深絞り加工とするなど工夫を凝らしており、排気系はトータルで従来モデル比484g軽量となった。

 2004年モデルにおいても排気デバイスEXUPの設置は最初から不可欠とされた。エンジン搭載方式が変わりエンジン位置が下がったため、バンク角を稼ぐうえでスペースの制約が大きくなったエンジン下のスペースを有効に使い、また軽量化を促進するため、従来モデルではエキパイ毎に設置されていたEXUPバルブは2本に集合させた後方に配置された。また1/2、3/4番気筒の排気を合流させ排気脈動を制御する方式とすることでEXUP本体の大きさを約半分に小型化している。また従来モデルではステンレスだったバルブ材質はチタンとなり、EXUPボディと合わせオールチタンとされた。

 フレーム:デルタボックスV(ヴィクトリー)と呼称する新設計フレームとなった。メインメンバーの外側はパネル材、内側は鋳物で、これを溶接して中空構造で仕上げられる。ピボット周りはアルミ鋳造品。エンジンのシリンダ前傾角が従来モデル30度→40度とされているが、これは、フレームの縦剛性を上げるためにタンクレールを内側に追い込んだ結果、エンジンの懸架レイアウトが変わったため。フレームがエンジンを抱え込むレイアウトから、エンジンを吊り下げるレイアウトに変わった。この変更によりフレームの縦剛性は従来モデル比2.5倍を確保し、ニーグリップ部分の幅は50mm狭くなり操作性を向上させている。横/捩れ剛性は1.3倍とされる。スイングアームはアップマフラーとの干渉を避け、逆トラス形状とされた。RフレームはCFダイキャストとアルミ板材を使い、アルミの質感を訴求する。

 足回り:前輪のフォークオフセット量は30mm。倒立式テレスコピックフォークはインナー43mm径。Rショックのプリロードアジャスタは質感向上のためアルミ製とされた。ホイールは新設計の5本スポークのキャストホイールで、ハブ/リム間剛性の最適化が図られている。タイヤサイズは従来モデルから不変で前輪:120/70-ZR17、後輪190/50ZR-17。

 ブレーキシステムも新設計されており、Fブレーキのディスク径は320mm。マスターシリンダはラジアルポンプ式、キャリパのマウントもラジアル式となった。Rブレーキディスクは220mm径。

 デザイン:タンク前部にエアクリーナボックスを持つ構造は従来モデルと同一だが、エアクリーナ部分の外装パーツが別体となった。スリム化された燃料タンクは幅を50mm縮小されている。ヘッドライトは2眼4灯式。メーターパネルも刷新し、中央にタコ、左に液晶の速度計/時計、右に液晶トリップメータ、ストップウォッチを装備する。テールランプはLED。カラーリングは「ディープレッドメタリックK」、「ディープパープリッシュブルーメタリックC」、「ダークブルーイッシュグレーメタリック8」の3色。

 参考資料:http://www.yamaha-motor.co.jp/profile/craftsmanship/technical/publish/no38/pdf/gs_01.pdf

 スペックデータシート(xlsxファイル)

 このモデルは2004年にレース用モデルとして50台限定で日本国内販売された(2004/1/29発表、2004/2/2受注開始、2004/3/10発売)。JSB1000参戦をターゲットにしたもので、購入者特典として、2004年シーズン限定で、エンジン及び車体のセッティング参考データの提供、イベントレース会場でのロードレーススタッフによるサポートが付いた。「YZF-R1レースベース車」の呼称のこの車両は、国土交通省認可を受けておらず、公道走行不可、保証対象外での販売だった。販売網は全国のヤマハエリアサービスショップ/ヤマハレーシングサービスショップ。価格は\900,000-(ECU、ハーネス付属、消費税含まず)。カラーはディープレッドメタリックKのみ。

 モデル名:2004年YZF-R1S/SCの全てを対象としてリコール情報アリ

 USヤマハのリコール情報より転記:

  Factory Modification Campaign - Unstable Engine Idling. Yamaha Technical Bulletin M2006-016R 「In affected motorcycles, an improperly designed Throttle Position Sensor (TPS) could cause an intermittently unstable idle when the engine is at idling speed,when the motorcycle is stopped,or during low speed operation.The engine could stall as a result.If the engine stalls after the operator disengages the clutch in a low gear while riding,the rear tire might slip momentarily if the operator abruptly re-engages the clutch.This could result in a vehicle crash with injury or death.スロットルポジションセンサー(TPS)の構造が不適切なため、アイドリング中や停止時、また低速走行時にエンジンが不安定になり、エンジンが停止することがある。においては走行中にスロットルを戻してクラッチを切るとエンジンが停止することがある。低いギアを使って走行中にクラッチを切った時にこの現象が発生した際、クラッチを急に繋ぐと後輪が瞬間的にスリップすることがあり、死傷事故につながる可能性がある。」→措置「To correct this defect, Yamaha initiated a Factory Modification Campaign. Unmodified affected motorcycles must have the TPS replaced with a new one.スロットルポジションセンサー(TPS)を新しいものと交換します。」措置済の識別:特に記載なし。この重大な欠陥について対処済かどうか不明な場合にはヤマハディーラーに確認するように、とされている。「Do not operate affected motorcycles until they are modified. If you are not the first owner of the motorcycle, and are unsure if this important modification has been done, contact any authorized Yamaha Motorcycle Dealer to check. Any authorized Yamaha Motorcycle Dealer can perform this service.」

http://www.yamaha-motor.com/sport/fmc/factory_modification_letter_M2006-016R.pdf


YZF-R1 (2005)

 水冷4stDOHC5バルブ 前傾インライン4 998cc。欧州市場向けモデル。

 このモデルは2004/11/16-12/10の期間限定の受注生産で「YZF-R1レースベース車」として日本国内販売された。2004/11/15発表。発売日は2005/1/11.JSB1000参戦をターゲットにしたもので、購入者特典として、2005年シーズン限定で、エンジン及び車体のセッティング参考データの提供、イベントレース会場でのロードレーススタッフによるサポートが付いた。この車両は保安部品を外した状態での販売とされるが、もちろん国土交通省認可を受けておらず、公道走行不可、保証対象外での販売だった。価格は\900,000-(YEC製レース用キットパーツのECU及びワイヤハーネス付属、消費税含まず)。カラーはブラックメタリックXのみ。

 モデル名:2005年YZF-R1T/TCを対象としてリコール情報アリ

 対象の車台番号:

 YZF-R1T: RN13E-0007911 to 0012965

  YZF-R1TC: RN13Y-0001423 to 0003392

 USヤマハのリコール情報より転記:

  Factory Modification Campaign - Unstable Engine Idling. Yamaha Technical Bulletin M2006-016R 「In affected motorcycles, an improperly designed Throttle Position Sensor (TPS) could cause an intermittently unstable idle when the engine is at idling speed,when the motorcycle is stopped,or during low speed operation.The engine could stall as a result.If the engine stalls after the operator disengages the clutch in a low gear while riding,the rear tire might slip momentarily if the operator abruptly re-engages the clutch.This could result in a vehicle crash with injury or death.スロットルポジションセンサー(TPS)の構造が不適切なため、アイドリング中や停止時、また低速走行時にエンジンが不安定になり、エンジンが停止することがある。においては走行中にスロットルを戻してクラッチを切るとエンジンが停止することがある。低いギアを使って走行中にクラッチを切った時にこの現象が発生した際、クラッチを急に繋ぐと後輪が瞬間的にスリップすることがあり、死傷事故につながる可能性がある。」→措置「To correct this defect, Yamaha initiated a Factory Modification Campaign. Unmodified affected motorcycles must have the TPS replaced with a new one.スロットルポジションセンサー(TPS)を新しいものと交換します。」措置済の識別:特に記載なし。この重大な欠陥について対処済かどうか不明な場合にはヤマハディーラーに確認するように、とされている。「Do not operate affected motorcycles until they are modified. If you are not the first owner of the motorcycle, and are unsure if this important modification has been done, contact any authorized Yamaha Motorcycle Dealer to check. Any authorized Yamaha Motorcycle Dealer can perform this service.」

http://www.yamaha-motor.com/sport/fmc/factory_modification_letter_M2006-016R.pdf


YZF-R1 (2006)

 水冷4stDOHC5バルブ 前傾インライン4 998cc。マイナーチェンジ。欧州市場向けモデル。2005/9/2発表、2005/10/1開催のパリ・ショーで2006年欧州市場向けニューモデルとして展示発表。発売は2005/10(販売会社により異なる)。販売計画はこの年に初めて設定されたSPを含め12500台(EU圏内、年間)。このSPモデルの新設定、従来モデル比で3psの最高出力アップ(175ps/12500rpm(ラム過給なし))、スイングアーム/ホイールベースの16mm延長などが主な変更点になる。車重は従来モデルより1kg増の173kgとなった。「よりエキサイティングなライディングの世界の提唱」がコンセプト。またヤマハ創立50周年記念としてインターカラー(レディッシュイエローカクテル1)モデルが設定されている。

 エンジン:圧縮比など燃焼室周りのスペックに変更はないが、吸気効率の改善により最高出力を同回転数で従来モデルより3psアップの175ps(ラムエアによる加圧なし)とした。

 フレーム:旋回性能の向上を目してデルタボックスVフレームの剛性バランスの見直しを実施。エンジン懸架部より前方のメインメンバーの内側の肉厚を部分的に1mm薄肉化している(鋳造部品(フレーム内側)とアルミ板材(フレーム外側)を貼り合わせて成型されるボックスフレームの鋳造部分)。

 スイングアーム:基本デザインはそのままに前後長を16mm延長したニューアームを採用。チェーン張力の影響を抑制し、トラクション性能を高める効果を見込む。これにともないホイールベースも16mm拡大となった(2004年モデルデータ1395mm→2006年1415mm比較では20mm差だが、ヤマハ公式資料では延長量は16mm)。

 前輪:アンダーブラケットの形状が変更され、アウターチューブを含む剛性バランスが見直されている。旋回中のフレームのしなりにあわせ、コーナー進入から立ち上がりまでの動きを穏やかなものにする特性が与えられた。

 タイヤ:前後17インチラジアルのOEM装着のタイヤは従来モデルと同じダンロップD218/ミシュラン パイロットパワーだが、内部構造の変更を施したとされる。

 カラーバリエーションは「ディープレッドメタリックK」「ディープパープリッシュブルーメタリックC」「ブラックメタリックX」「レディッシュイエローカクテル1(ヤマハ創立50周年記念カラー)」の4色。

 スペックデータシート(xlsxファイル)

 このモデルは2006年にレース用モデルとして10台限定で日本国内販売された(2005/10/12発表、受注期間2005/10/17〜12/20、2006/1/20発売)。購入者特典として、国内主要サーキットでのヤマハスクールの参加費無料での受講権(1回のみ)が付いた「YZF-R1レースベース車」の呼称のこの車両は、国土交通省認可を受けておらず、公道走行不可、保証対象外での販売だった。価格は\900,000-(ECU、ハーネス付属、消費税含まず)。カラーはブラックメタリックXのみ。


YZF-R1 SP (2006)

 水冷4stDOHC5バルブ 前傾インライン4 998cc。R1初のSPモデル。欧州市場向けモデル。サーキットパフォーマンスを高めた上級機種として2006年型YZF-R1と同時に発表。スリッパークラッチ、オーリンズ製前後サス、マルケジーニ製アルミ鍛造ホイールの採用などがスタンダードR1との主な相違点。エンジンスペックなどに相違はなく、乾燥車重はSTDに比べ1kg増の174kg。2006年R1の変更に加えてSPに施された変更は以下の通り。

 フレーム:エンジン懸架部分の締結剛性を最適化し、クローズドコースでの高速域での操縦性改善が図られている。

 スリッパークラッチ:SPのみの装備として採用。後輪からクランク側へかかるトルクを制御することで、車体のコントロール性の向上を狙う。

 足回り:SPのみの装備として前後にオーリンズ製サスペンションを採用。また同様に特別装備としてマルケジーニ製アルミ鍛造ホイールを採用。このホイールはマルケジーニとヤマハが新たに共同開発したもので、製造はマルケジーニ。デザインはYZR-M1と同じY字型スポーク。アルミ鍛造ホイールの量販公道用モデルへの採用はヤマハ初になる。このホイールはノーマルモデルに比べ前後合計で400g軽量とされる。

 タイヤ:標準装着タイヤとしてピレリ ディアブロコルサを選択する(STDはダンロップD218/ミシュラン パイロットパワー)。

 カラーバリエーションは「ブラックメタリックX」のみ。

 スペックデータシート(xlsxファイル)


YZF-R1 (2007)

 水冷4stDOHC4バルブ 前傾インライン4 998cc。5代目R1。2004年以来のフルモデルチェンジ。欧州市場向けモデル。2006/10/10発表、2006/10/11開催のインターモト2006(ケルン)で2007年欧州市場向けニューモデルとして展示発表。発売は2006/11(販売会社により異なる)。開発コンセプトは明快で「最速スーパースポーツ Fastest & Highest Status Super Sport」。エンジンは5バルブ→4バルブの新設計エンジンとなり、電子制御式の可変エアファンネルを量販二輪車として初めて装備した。フレームから新設計のフルモデルチェンジで、センターアップマフラーのデザインは踏襲する。スペックは従来モデル比175ps/12500rpm→180ps/12500rpm(ラム過給なし)、10.9kg*m/10500rpm→11.5kg*m/10000rpm(ラム過給なし)。車重は177kgとなった(2006年モデル:173kg(STD)、174kg(SP))。

 このモデルはカナダ向けモデルが潟vレストコーポレーション扱いで国内販売された。参考小売価格は\1,320,000-(リサイクル費含む。税、諸費用含まず)。最高出力値が若干異なり、179ps(131.3kW)/12000rpmとなっている(プレスト公表値)。国内向けカタログのコピーは「The Best Speed of Beauty」。用意されたカラーバリエーションは「ディープパープリッシュブルーメタリックC (DPBMC)」「ディープレッドメタリックK (DRMK)」「ダークブルーイッシュグレイメタリック8 (DBNM8)」の3色。赤と黒モデルにはホイールに赤ラインが入る。

 エンジン:新エンジンはヤマハのお家芸ともいえた5バルブエンジンではなく、MOTOGPマシンYZR-M1からフィードバックする4バルブとなった。燃焼室はボアxストロークのスペックは従来モデルと変わらず、4バルブ化による燃焼室/動弁系の小型化により圧縮比が12.4→12.7へアップされている。ピストンはアルミ鍛造で、FSコンロッドを採用する。チタン製吸気バルブ径は31mm。ジェニック(G.E.N.I.C.H.)思想を推進する目玉は、2006年型YZF-R6で量販二輪車に初採用とされた電子制御スロットル(YCC-T)+3CPU ECUに加え、YCC-Iと呼ぶ量産二輪車初の可変式エアファンネルの採用。上下に二分割した吸気ダクトを、エンジン回転数とアクセル開度から演算してモーターで分離駆動する。高速域では下側のダクトのみを有効とすることで、中速/高速性能の両立を狙うもの。上下連結時、吸気ダクト長は140mm、下側のみで65mmとなる。排気系にはO2フィードバック制御三元触媒を採用する。サイレンサ及び1/2番、3/4番気筒排気管の集合部分に設置されるEXUPはチタン製。また2006年モデルではSPにのみ装備されたスリッパークラッチを、2007年モデルで標準装備とした。

 車体:新設計とされたアルミ製デルタボックスフレームは従来同様に内側を鋳造、外側を展伸材とし、これを溶接してボックス構造とする。スイングアームピボットは3mm上に移動されている。スイングアームはピボット部分を鋳造、アーム部分はCFダイキャスト、アクスル部分は鍛造品とし、横剛性が過大になるのを防ぎながら捩れ剛性を従来比30%アップさせた。

 Fサスペンションのインナーチューブは従来と同じ43mmだが、薄肉化が進められており、内部のピストンを大径化、ロッドをアルミ製に変更するなど一新されている。ラジアルマウントタイプの前輪ブレーキはキャリパに6ポットタイプを採用する。2ピース構造の4枚のブレーキパッドを6つのピストンで操作する機構で、こうした技術によりFブレーキディスクを320mm→310mmに小径化し、慣性モーメント低減を図っている。Rサスペンションは高速/低速の圧側減衰力を独立して調整可能な「2WAY圧側減衰調整機能」を装備、これは2006年型YZF-R6で採用された機構。軸間距離、シート高は従来モデルから変更されていない。

 スペックデータシート(xlsxファイル)

 

 モデル名:YZF-R1としてリコール情報アリ

 プレストのリコール情報より転記:「スロットルポジションセンサー(TPS)の構造が不適切なため、走行中にスロットルを戻してクラッチを切るとエンジンが停止することがある。その状態で、クラッチを急に繋ぐと、低い変速段においては後輪が瞬間的にスリップすることがあり、最悪の場合、走行安定性を損なうおそれがある。」→措置「全車両、スロットルポジションセンサー(TPS)を良品と交換します。」措置済の識別:特に記載なし。対象の車台番号が若干異なるが同じ件と思われるUSヤマハのリコール情報では、この重大な欠陥について対処済かどうか不明な場合にはヤマハディーラーに確認するように、とされている。

 対象車台番号:RN121-0000301 to 0026567, RN122-0000301 to 0004313, RN124-0000004 to 0001147,RN125-0000001 to 0000494, RN13E-0000009 to 0012965, RN13N-0000004 to 0002787, RN13Y-0000005 to 0003392, CN01C-0000001 to 0000024.

http://www.presto-corp.jp/service/recall/20061207_01.pdf

http://www.yamaha-motor.com/sport/fmc/factory_modification_letter_M2006-016R.pdf