SUZUKI - T


Wolf T90 (1969)/T125 (1967)/Wolf T125 (1969)/T200 (1967)/TC200 (1967)/T20 (1965)/superT21 (1966)/T250-I (196-)/T250-II (196-)/T250-III (19-)/T350 (1970)/T500 (1968)/T500-II (1969)/T500-III (1970)/TR500 (1968)


Wolf T90 (1969)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 89cc。Wolf T125 (1969)の兄弟車。基本的に車体は共通だがエンジンのほかタンク、ホイールサイズなどが異なる。パワーユニットは38.0*39.6mmシリンダとボア、ストロークとも125と異なり、10.5ps/9000rpm、0.89kg*m/7000rpmのスペック。始動はキックのみでミッションは5速(3.18/2.07/1.56/1.24/1.09)。ホイールサイズは前後2.50-18。


T125 (1967)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 124cc。43.0*43.0mmのスクエアシリンダを採用する125ccスポーツ。T200と同時開発と思われる。CCI採用のエンジンは15ps/8500rpm、1.38kg*m/7000rpmを発生し、ミッションは5速。車体はおそらく基本的にT200と共通で鋼管ダブルクレードルフレームに前輪テレスコピックフォーク、後輪支持は鋼管スイングアーム+2本ショック。ホイールサイズはF2.50-18、R2.75-18。公称最高速度130km/h。


Wolf T125 (1969) ウルフ

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 124cc。ホンダ CB125、ヤマハ AS1の対抗馬として開発されたロードスポーツ。T125の名称を受け継ぐがまったくの新設計で、1968年のモーターショーにて発表。シートよりも長いロングタンクをデザインに盛り込みレーサーライクなスタイルを提供した。トリフォームフレームと呼称する鋼管フレームはステアリングヘッドとスイングアームピボットを直線に近いメンバーで結び、これに水平近く寝かせたツインシリンダエンジンを吊るす形態をとる。セミアップのエキパイがクランクの上を水平に抜ける間にダウンドラフトタイプのキャブレタを2連装するが、このキャブレタはセッティングを出すのが難しかったといわれる。そのエンジンは43*43mmのスクエアシリンダで、15ps/8500rpm、1.38km*m/7000rpmを発生。もちろんCCIを採用する。始動はキックのみでミッションは5速。高いステップ位置と低い一文字ハンドルの標準装備により国産量販車として例のなかった前傾姿勢を強いるポジションに当時さまざまな声があがり、セミアップハンドル、ブリッジ付のアップハンドルなども用意された。メーターは2眼タイプでスピードメーターには140km/hまで刻まれる。ヘッドライトは丸型だが例によってレンズ下端を水平ライン近く変形した異型タイプでスズキ車であることを主張した。前輪懸架はテレスコピックでブーツが付く、後輪支持は鋼管スイングアーム+2本ショックでショックユニットはカバードタイプ。前後フェンダーには浅いメッキ仕上げのものを採用する。ホイールサイズはF2.50-18、R2.75-18。兄弟車としてWolf T90 (1969)も用意され基本的に車体は共通だがエンジンのほかタンク、ホイールサイズなどが異なる。当時WGP125ccクラスにおいてアドバンテージを持っていた同社の渾身の作といってよいが、ビジネスモデル主流の時代にスポーツモデルとして潔すぎるほど割り切った設計で賞賛されながらもビジネスとしては成功したとはいい難い。公称最高速度130km/h、0→200mは10.28sec。


T200 (1967)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 196cc。T250をスケールダウンした200ccエンジンを搭載するロードスポーツ。最高出力は21ps。もちろんCCIを採用。車体は鋼管ダブルクレードルフレームに前輪テレスコピックフォーク、後輪支持は鋼管スイングアーム+2本ショック。スクランブラーモデルTC200もラインナップされた。クランクケースカバーなどを見るとT125などと共通部分が見られるようだ。


TC200 (1967)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 196cc。T250をスケールダウンした200ccエンジンを搭載するT200のスクランブラーバージョン。21psの最高出力のスペックは同一だがギア比など低速寄りに見直されている。シリンダサイズは50.0*50.0mmのスクエアでエンジンスペックは21.0ps/7500rpm、2.09kg*m/7000rpm。始動はキックのみでミッションは5速。給油方式にはもちろんCCIを採用。セミアップのエキパイに短いRフェンダー、ブリッジの入る高いハンドルバーの採用などのほかタンクデザインなども変更されている。車体は鋼管ダブルクレードルフレームに前輪テレスコピックフォーク、後輪支持は鋼管スイングアーム+2本ショック。Fフェンダーは浅いタイプ。アンダーガードはつかない。ホイールサイズは前輪2.75-18、後輪3.00-18。公称最高速度130km/h。0→400mは16.1sec。


T20 (1965)

 空冷2stパラツイン ピストンバルブ 247cc。スズキの命運をかけた初のスポーツバイク。CB72、YDS1をライバルに1963年に開発がスタート。それまでのスズキは実用車しか持っておらず、1959年のヤマハ250S(YDS1)、1960年発表のホンダCB72の本格ロードスポーツのブームにこうした車の開発は急務だった。「世界最高の250ロードスポーツ」を目指して開発コードX6と呼ばれたマシンは巨大市場北米をももちろん視野に入れたものだった。

 目標出力は25ps以上(リッター100psだ)。これを達成するため新技術が次々に投入される。スリーブを入れたアルミシリンダや、当初セルミックスと呼ばれた分離潤滑技術に代表されるものだ。2サイクルの分離給油はヤマハのオートルーブが量販車初といわれるが、セルミックスはこれをさらに推し進め、クランクシャフト駆動のオイルポンプによりクランクシャフトベアリング、コンロッドビッグエンドを直接強制潤滑するものだった。オイルはクランクケース内で飛散し、スモールエンド、シリンダなどを潤滑、冷却した後、混合ガスとなって燃焼室へ導かれる。これはGPシーンからのフィードバックで、のちにCCI(Cylinder Crankshaft Injection)と命名され、優れた耐久性を誇るスズキエンジンの証とさえなった。このエンジンを積む車体はスズキ初のパイプフレームでダブルクレードルでスポーツバイクとしての先進性をアピールした。ミッションはこれも市販車初のクロスした6速が奢られる。

 X6のテストは完成したばかりだった竜洋テストコースや、北米のデザートなど様々な条件下で念入りに行われた。そして1965.5、北米で発売されるや、サイクルワールド誌は「500ccクラスに劣らない動力性能を持つ高性能車」と絶賛した。北米仕様の車名は「X6ハスラー」、2ヶ月後の1965.7には「T20」の名称で国内販売に移された。開発には2年半という時間がかけられたことがわかる。ヤマハやホンダを抜きん出て見せたのは25ps/8000rpmの出力と6速ミッションが145kgの車体を160km/hまで引っ張る高い動力性能だった。T20の最高出力は25psだったが、X6は29psを絞り出していた。そして翌年には30.5psまで引き上げたT21が国内販売される。軽量ハイパワーなスポーツバイクとして「全開を楽しむ車」としてスズキはこれを売り出し、T20,T21は2年で35,500台が生産された。

 エンジンは空冷パラツイン ピストンバルブでレスポンスの良さが身上だった。極めてピーキーな性格とされ、3速でもフロントを持ち上げることができたが、4000rpm以下ではまったく走らなかったとまでいわれる。当時としては深いバンク角が与えられていたが、車体がエンジンに負けていたようでコーナリング時の挙動にはクセがあったともいわれている。0→400mは14.07secを記録し、スタートダッシュで追いつける車は公道上にはなかった。

 車体色は黒とクローム。メーターはヘッドライトボディと一体で一眼の中にタコとスピードが並んで配置されるコンビネーションメーター。スピードメーターは180km/hスケールで、両メーターの針は11時から時計回りに降りてくるデザイン。キックは左側でプライマリー式。ブレーキは前後180mm径のドラムだった。Fドラムは2リーディング。円形の下端を水平に落としたデザインのヘッドライトはコレダ以来のスズキの顔だ。Rショックは下端でプリロードをかけることができた。ガスタンク前方に透明なビニールチューブが取り回されているが、これはガスの残量を確認するためのアイデアだ。6速ミッションには飛越し防止のための工夫が凝らされていて2ndからローへ落とすためにはシフトペダルを2回踏み込む儀礼が必要だった(これはスポーツバイクとしては評判がよくなく1967のT250で通常シフトに戻される)。サイドカバーに入るスズキのロゴは筆記体のもの。

発売 1965 全長 2030mm 全幅 765mm 全高 1030mm 軸間距離 1285mm シート高 - 最低地上高 - 乾燥重量 145kg 整備重量 - 空冷2サイクル横置2気筒 ピストンバルブ 247cc ボア*ストローク 54.0*54.0mm 圧縮比 7.3 MaxP 25.0ps/8000rpm MaxT 2.42kg*m/7000rpm 始動方式 プライマリーキック 潤滑方式 分離(セルミックス/CCI) 点火方式 - キャブレタ - クラッチ 湿式多板 6速リターン 変速比 2.57/1.68/1.27/1.04/0.889/0.79 1次減速比 - 2次減速比 - フレーム - キャスター - トレール - Brake F 2リーディングドラム Brake R ドラム SusF テレスコピック Dumper F - SusR スイングアーム Dumper R - Tyre F 2.75-18 Tyre R 3.00-18 タンク容量 14.0L オイル容量 - 車両価格 \187000-(1965)

superT21 (1966)  

 1965年発表のT20は翌年T21となり圧縮比を上げ30.5psを同じ8000rpmで発生するまでチューンされた。この250ccクラスでライバルメーカーとのパワー競争が始まったためで、同年カワサキ250A1が31psで肩を並べている。T21はカラーリングに従来のT20の黒のほかに赤と青のキャンディカラーが用意され、イメージを一新する出来栄えとなった。弱いといわれたフレームは各部にガゼットを設け補強が図られたが決して充分とはいえなかったようだ。ミッションはより広い範囲をカバーするようギア比が若干見直されている。車体構成はT20と基本的に同一。Fフォークのブーツ、Rショック上部のカバーが外され、スプリングが剥き出しとされている。Fサスのスプリングは外巻きだった。公称最高速度160km/h。

発売 1966 全長 2030mm 全幅 765mm 全高 1030mm 軸間距離 1285mm シート高 - 最低地上高 150mm 乾燥重量 145kg 整備重量 - 空冷2サイクル横置2気筒 ピストンバルブ 247cc ボア*ストローク 54.0*54.0mm 圧縮比 7.8 MaxP 30.5ps/8000rpm MaxT 2.82kg*m/7000rpm 始動方式 プライマリーキック 潤滑方式 分離(セルミックス/CCI) 点火方式 バッテリ キャブレタ - クラッチ 湿式多板 6速リターン 変速比 2.570/1.740/1.270/1.040/0.890/0.740 1次減速比 - 2次減速比 - フレーム - キャスター 27度 トレール 83.2mm Brake F 2リーディングドラム Brake R ドラム SusF テレスコピック Dumper F - SusR スイングアーム Dumper R - Tyre F 2.75-18 Tyre R 3.00-18 タンク容量 14.0L オイル容量 - 登坂力 0.39 車両価格 \187000-(1966)

T250-I (196-)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン247cc。


T250-II (196-)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン247cc。


T250-III (19-)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン247cc。54.0*54.0mmのスクエアシリンダより30.5ps/8000rpm、2.82kg*m/7000rpmを発生。1971年GT250へモデルチェンジ。


T350 (1970)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 315cc。T250のパワーユニットのボアを7mm広げ、T500との中間排気量としてラインナップされたロードスポーツモデル。鋼管ダブルクレードルフレームに前輪テレスコピック、後輪支持は鋼管スイングアーム+2本ショック。エキパイはダウンタイプで左右2本出し。CCIエンジンのスペックは33.5ps/8000rpm、3.13kg*m/7500rpm。始動はキックのみでミッションは6速を採用。浅い前後フェンダーはメッキ仕上げでホイールサイズはF3.00-18、R3.25-18。公称最高速度165km/h、0→400mは13.8sec。


T500 (1968)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 492cc。北米市場の需要に応えるかたちで開発されたスズキ初の大排気量車。ファイブの名称で開発は極秘で進められた。機密保持のため深夜に行われた竜洋コースでのテストで目標値180km/hを達成したのち、最終テストはネバダ砂漠で行われたといわれる。発表は1967年のモーターショー。熱問題の難しさから2stエンジンは350ccが限界といわれた時代に発表された500ccエンジンは注目を集め北米市場で成功を収めた。クランクケース後方右側に置かれたCCIのオイルポンプ(冷却フィンが刻まれる)がクランクシャフト両端へオイルを圧送し強制潤滑する。振動対策からキャブレタはゴム製インシュレータを介して接続される同圧タイプ。70.0*64.0mmのショートストロークエンジンは47ps/6500rpm、5.5kg*m/6000rpmを発生する。始動はキックのみでミッションは5速。車体はT20タイプの鋼管ダブルクレードルフレームに前輪テレスコピック、後輪支持に鋼管スイングアーム+2本ショックの組み合わせ。テレスコピックにはブーツが付き、後輪ショックユニットはカバードタイプ。右サイドカバーがオイルタンクになる。ヘッドライトは丸型だが下端を水平ライン近くまで変形する当時のスズキを象徴するデザイン。メインカラーはメタリックゴールドで、メッキパーツを多用して豪華さを演出する。車名は左サイドカバーにただ「500」と入るのみ。ホイールサイズは前輪3.25-19、後輪4.00-18。組み合わせるドラムブレーキはダブルパネルツーリーディング式でF200mm、R180mm。鋲で張られたダブルシート後方にメッキ仕上げの線材によるタンデムグリップが付く。右サイドメンバー後方にエアポンプを装備した。公称最高速度は180km/h。0→400mmは13.00sec。北米市場へのアピールのためにレーサー仕様に改められたのがTR500で目論見通りデイトナで活躍した。


T500-II (1969)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 492cc。1969年はマイナーチェンジ。


T500-III (1970)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 492cc。1970年はマイナーチェンジ。T500の最終型。翌1971年には後継車GT500が発表される。


TR500 (1968)

 空冷2st ピストンバルブ パラツイン 492cc。T500のロードレーサーバージョン。北米市場へのアピールのためにデイトナに送り込まれた。